4月、世界最大級の高級腕時計見本市ウォッチズ&ワンダーズ(WW)がスイス・ジュネーブで開催され、54ブランドが参加した。他の著名ブランドも近隣で展示会を開き、技巧を凝らしたものや、実用性に富んだ時計が多数発表された。
最高級の時計の、機能性やデザインを極限まで求める姿勢は技術革新を促し、やがてその製法は広く売られる時計の製造にも生かされる。
創業150周年のピアジェによるアルティプラノ アルティメート コンセプト トゥールビヨン(15本限定、1億824万円)は複雑機構で厚み2ミリの衝撃。広報担当者は「薄型の限界を超えた」と得意顔だ。
一方、WW会場外で独自に展示会を開いたブルガリは機械式史上最も薄い1.7ミリのオクト フィニッシモ ウルトラ COSC(20本限定、8428万2千円)を発表。広報担当者は「どんなモデルでも日常的に使ってもらいたいというのがブルガリウォッチのコンセプト」と話した。そんな人は存在するのだろうか。
IWCのポルトギーゼ エターナル カレンダー(価格要問い合わせ)は「永遠へのオマージュ」がテーマ。日付と曜日は西暦2400年まで1日たりともズレないよう対応し、月の満ち欠けを示すムーンフェーズは4500万年に1度の誤差にまで精度を高めたという「冗談のような本気すぎる時計」で、部品には400年に1度しか回転しない歯車も存在する。
ドレス系の最高峰ブランド、カルティエはトーチュ モノプッシャー クロノグラフ(200本限定、897万6千円)を発表した。1928年に初めて登場し、98年にもリバイバルされたが、今回はそれまで円形だった内部の機構がケースに合わせた形状に。うっとりするようなデザイン性の高さも、このブランドの大きな魅力だ。
アジアで唯一参加するグランドセイコーのSLGW003(145万2千円)も印象深かった。ステンレスに近い明るい色のチタン製ケースで、手巻きムーブメント。巻き上げ時に動力ぜんまいの逆回転を防止する部品「コハゼ」が可動式になっていて、その鳥のような形状は岩手県雫石にある同社の工房にも姿を見せるセキレイをイメージした。高精度と、一度の巻き上げで80時間動作する機能を両立する。
時計を愛好する人々から尊敬を集めるブランド、パテックフィリップからはワールドタイムの新モデル(1213万円)。各都市の時間を参照する際、現地での日付も連動表示される直径40ミリのホワイトゴールドケースで、デニムを連想させるレザーブレスレットにはカジュアル感も漂う。
ショパールのL.U.C XPS フォレスト グリーン(174万9千円)はケース幅が40ミリで、厚みは7.2ミリのドレスウォッチ。ケースに使ったステンレスは8割がリサイクルだ。
スポーツウォッチでは、ロレックスの新作がケースもブレスレットも18金製の3900メートル防水、ディープシー(751万800円)だった。ケースは幅44ミリ、厚さ17.7ミリと大ぶりで、その重さは実に約322ミリとズッシリ……。着用して海に潜ることが全く想像できないダイバーウォッチだが、陸上ではひときわの存在感を放つ。
ゼニスのデファイ スカイライン クロノグラフ(176万円)は評価が高い同社のムーブメント「エル・プリメロ」の最新版を搭載した。
高品質かつ競争力の高い価格帯の商品で人気のチューダーは今回、定番のダイバーズウォッチに第2時間帯表示機能をつけたブラックベイ 58 GMT(64万3500円)を発表と同時に市場に投入した。店頭では入荷とほぼ同時に売れる状態だという。
主催者によると今年のWWの入場者数は昨年比14%増の4万9千人超。一般入場のために販売された1万9千枚のチケット購入者の平均年齢は35歳で、その4分の1は25歳以下だったという。(編集委員・後藤洋平)